12月、日本のケンタッキーフライドチキン(KFC)の店舗前には、毎年決まって長い行列ができますよね。
それはもはや冬の風物詩であり、人々は寒空の下で辛抱強くチキンを待ち続ける・・・
なぜこれほどまでに、KFCは日本のクリスマスに欠かせない存在となったのか気になりませんか?
すべての始まりは、とある店長の優しい嘘?
この国民的熱狂の起点は、1970年代初頭、経営不振にあえぐ一人の店長がついた、たったひとつの嘘に遡る。
物語の主役は、日本初のKFC店舗の店長だった大河原毅氏。
オープン当初、フライドチキンは日本人に馴染みがなく、店は閑古鳥が鳴いていた。大河原氏は店の裏で小麦粉の袋をベッド代わりにして寝るほどの苦境にあったという。
転機が訪れたのは、あるクリスマス。
近くのミッション系幼稚園から「パーティーでサンタクロースに扮して、チキンを届けてほしい」と依頼されたことだった。
これが大好評を博し、大河原氏は「クリスマスには七面鳥の代わりにフライドチキンを」というアイデアを思いつく。
この取り組みがNHKの目に留まり、彼はインタビューを受ける。「フライドチキンを食べるのは、西洋では一般的なクリスマスの習慣なのですか?」と問われた大河原氏は、歴史を動かす一言を発した。
「チキンではなく、七面鳥を食べていることは知っていました。しかし、『はい』と答えました。嘘をついたのです」
これは単なる言い逃れではない。需要を創造し、文化を定義づけた、日本マーケティング史に残る一言である。
たった一つの嘘が、半世紀続く日本の文化そのものを作ったと思うとすごいですよね、ロマンがあります。
わずか3日間で生まれる70億円
ひとりの人間がついた小さな嘘は、やがて巨大な経済と物流のモンスターマシンへと成長した。
フードリンクニュースによると、2023年、日本KFCはわずか3日間(12月23日〜25日)で70億円もの売上を記録。さらに、クリスマスの象徴である「パーティバーレル」だけでも、全国で100万セット以上が販売されたんだそう。
この70億円という数字は、単なる金額ではない。それはSNSで「行列地獄」と報告される、膨大な待ち時間の金銭的価値そのものである。「待ち時間三時間とか平気で言うに違いない」といった投稿に見られるように、その需要は圧倒的で、もはや混沌に近い。
しかし、この驚異的な需要を支える現場では、ある避けられない矛盾が生じていた。
実は一年で一番美味しくない日?
クリスマス当日がKFCの品質が最も不安定になりかねないという事実、考えたことがありますか?
原因は、凄まじい注文量。
普段なら注文を受けてから揚げるチキンも、この時期は一度に大量調理し、保温状態で保管する「作り置き」になりますよね。これにより、チキンの命である衣のサクサク感が失われ、肉がパサつく可能性が高まるのだ。
もちろん店舗は品質維持に全力を尽くしているが、日本中が最もKFCを求める日が、必ずしも最高のコンディションではないという矛盾。
この巨大マシンの宿命ともいえるジレンマは、この文化の最も興味深い側面だ。
クリスマスのメニュー制限
クリスマス当日、KFCはあなたが知っているいつものKFCではない。
ピーク時(特に12月23日〜25日)、多くの店舗ではメニューが大幅に制限され、調理に手間のかかるサンド(バーガー類)やツイスターといった商品が販売休止になることが多いです。
これは、厨房のオペレーションを「オリジナルチキン」と「クリスマス用セット」の製造に完全に集中させ、回転率を最大化するための戦略的な判断。
この期間、KFCは多様なメニューを提供するファストフード店から、クリスマスチキンを供給することに特化した「チキン専門店」へと姿を変えます。
「予約は11月」が常識。チキンをめぐる知られざる攻防戦。
• 早期予約という先制攻撃: 戦いは11月上旬の予約開始と共に火蓋が切られる。12月上旬までの「早割」期間中に予約を完了させることが、価格と希望時間を確保する上で最も重要な作戦
• オフピーク受け取りという奇襲: 予約の主戦場は24日の夕方だ。この激戦区を避け、あえて23日に受け取る、あるいは24日の昼過ぎなど、敵(行列)が手薄な時間帯を狙うのが賢い選択
• 当日購入という絶望的な籠城戦: 予約を逃した場合、選択肢はほぼ「オリジナルチキン」単品に限られる。パーティバーレルという主要兵器の入手は絶望的だ。当日購入に挑むなら、在庫が最も豊富な開店直後の午前中が、唯一にして最大の勝機。
KFCのクリスマスチキンは、食べたい時に買うものではなく、数週間前から計画を立てて確保するものです。
まとめ
ひとりの店長がついた嘘から始まり、年間70億円を動かす巨大なマシンへと進化した日本のケンタッキークリスマス。
このユニークな文化は、決して静的なものではありません。
事実、29年間続いたクリスマスの象徴「クリスマス絵皿」の提供が2022年を最後に終了したように、時代と共にその姿を少しずつ変え続けています。
今年のクリスマス、あなたはどうしますか?